高血圧とは

高血圧は、安静な状態で血圧が慢性的に正常値よりも高い状態のことです。血圧は、動脈を血液が流れるときに血管の内側にかかる圧力です。高血圧になるといつも血管に負担がかかっている状態になります。

そのため、血管の内側の壁が傷ついたり、柔軟性がなくなって固くなったりしてしまいます。その結果、動脈硬化を起こしやすくなります。

血圧は、体を動かしたり寒いところに行ったりするなどの少しの行為で上がります。しかし、このような一時的に血圧が高い状態は高血圧ではありません。

 

多くの高血圧では自覚症状はありません。少し血圧が高くても基本的に自覚症状は出ないのです。血圧が非常に高いときは、頭痛やめまい、肩こりなどの症状が現れることがあります。

しかし、このような症状は血圧に関わらずよく現れる症状です。そのため、高血圧は自覚症状での判断が難しい病気です。症状があってもなくても病院等で調べることが大切です。

 

高血圧の状態を放っておくと動脈硬化を起こしやすくなってしまいます。脳卒中や心疾患、慢性腎臓病などの大きな病気に繋がってしまう危険性が高いのです。

脳卒中は命が助かっても、運動障害や言語障害が残ってしまうことが多いため、回復までに長い期間のリハビリが必要となることもあります。高血圧は脳卒中だけでなくその他いろいろな病気のリスクを高めることが考えられます。心筋梗塞や狭心症などのリスクは特に男性への影響が大きいです。

 

最高血圧が10mmhg高くなった場合、心筋梗塞や狭心症のリスクは約15%上がります。血圧が高いと腎臓にも大きな負担がかかります。

血液の中の過剰な塩分などをうまく外に出すことができず、また血圧が上がってしまうという悪循環を起こすことも多いです。慢性腎臓病を起こしてしまった場合、脳卒中や心筋梗塞が原因の死亡率が上がることも分かっています。

高血圧の原因

高血圧の原因には、遺伝的なものと、生活習慣などの環境的なものがあります。また、血圧の高い状態が続くと、動脈硬化が進んで血管が厚く硬くなり、内径が狭くなって血液が流れにくくなるため、それに負けずに血液を流そうとして、いよいよ血圧が高くなります。この悪循環も、高血圧症の原因と言えます。

 

<遺伝的な要因>

高血圧には、遺伝的な側面があります。例えば、両親ともに高血圧である子どもは約50%が、両親のどちらかが高血圧の場合は約30%が高血圧になる、という報告もあります。ただし、遺伝といっても高血圧の遺伝子があるのではなく、体質が遺伝するようです。また、食習慣のような生活習慣が親子で似ていることも影響すると言われています。

 

<環境的な要因>

〇過剰な塩分摂取

体には、体内の塩分濃度を一定に保つ働きがあります。

そのため塩分を取りすぎると、濃度を薄めようと体内に水分が増え、血液量が増加します。その結果、血圧が上昇します。

 

〇カリウムを多く含む野菜や果物の摂取不足

体内の余分なナトリウム(塩分を構成する原子)は腎臓から排出されますが、その際カリウムが不足しているとナトリウムは充分に排出されません。その結果、血液中の塩分濃度が増し、それにつれて血液量が増えて血圧が上昇します。

 

〇肥満

脂肪細胞から血圧をあげたり動脈硬化を促進する物質が分泌されます。また、インスリンの働きが悪くなってその血中濃度が上がり、交感神経を刺激して血管を収縮させます。特に内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)は要注意です。血液の量は体重に比例するので、肥満は血液量を増やし、心臓にも負担をかけます。

 

〇過剰飲酒

習慣的な大量飲酒は、血圧を上昇させます。中性脂肪を増やし、動脈硬化も促進させます。酒は「百薬の長」とも言われ、心をリラックスさせて血圧を下げるイメージがありますが、飲みすぎは逆効果です。ほどほどを心がけましょう。

 

〇精神的ストレス

精神的なストレスがかかると、交感神経の働きが活発になり、心臓の収縮を強め、心拍数も増えて、血液量が増えます。また、血管も収縮させます。

 

〇運動不足

運動不足は血行を悪くし、血圧をあげます。日常的に座ったまま過ごす時間が長い人は、高血圧になる危険性を抱えているといえます。

 

〇喫煙

タバコの成分のニコチンが、交感神経を刺激し、血圧をあげるホルモンを分泌させて、血管を収縮させます。血液中の活性酸素(働きを特に強めた酸素)が増え、動脈硬化を促進します。

 

高血圧の鍼灸治療

鍼灸には血圧を整える働きがあり、

 

・高血圧の方に鍼灸治療を行うことで血圧が低下する

・低血圧の方に鍼灸治療を行うことで血圧が上昇する

 

といった結果の他、高血圧の方へ鍼灸刺激を行い、四肢末端の循環改善や自律神経機能を調節することで血圧の低下が見受けられたケース、腰痛などの関節痛を主訴とした治療で高血圧の方の血圧の低下が見られたなどの結果が得られております。

 

また、皮膚刺激を通じて脳(視床下部)に影響を与えホルモン分泌のバランスを整える作用や「気持ちいい」という刺激により脳内のβエンドルフィンといった神経ぺプチド(脳内麻薬物質)の分泌を活性化させ筋緊張の解消やリラクゼーション効果も期待できます。

 

そのため、高血圧の治療や生活習慣の改善に鍼灸治療の併用はとても相性がいいと考えられています。