小児はりとは

「小児はり」は子どもを対象とした鍼の技法として日本で開発され、江戸時代後期から盛んに行われ、日本独自の治療方法として歴史とともに確立されてきました。「小児はり」は一般的な鍼とは異なり、鍼を体に刺さずに専用の道具で皮膚をさする、あるいは皮膚にトントンと当てるだけの技法です。

 主に乳幼児から12歳ぐらいまでの子どもを対象に行われます。症状や疾患によっては通常の刺す鍼や灸が併用されることもあります。

 

子どもの以下のような症状に用いられることが多いです。

 

〇自律神経症状

子どもは、起立性調節障害(起立性低血圧)、過敏性腸症候群など、精神的緊張が誘因となって自律神経失調状態になることが少なくありません。新学期などで気を張り詰めて何とか頑張っているうちは良いのですが、1,2か月して疲れが溜まりバテてくると症状がでてきます。気持ちだけの問題ならGW休暇などでリフレッシュできますが、寝不足で朝食を取らない状態が続き、体力不足で胃腸が不調になると、昼食後に眠くなり、午後の勉強が手につかなくなります。

これを放置すると、低血圧傾向となり胃腸がますます弱くなり、食欲にムラが出て体調が不安定になり勉強への意欲が低下します。その結果、体力も低下し、自律神経失調で慢性疲労状態になります。軽い下痢や便秘傾向になったり、お腹にガスが溜まって腹痛を繰り返したり、頭痛や肩こりを伴うこともあります。

 

〇夜泣き

眠っていた赤ちゃんが理由もなく突然泣き出すことをいいます。おむつが濡れていたり、お腹がすいているなどはっきりとした理由がある場合は夜泣きとはいいません。むずがる程度の物から、火が付いたように泣く程度のものまで様々です。一般的には生後2~3ヶ月ごろから始まります。

夜泣きとは、こま切れに眠る赤ちゃんの時期から大人に近い睡眠になるころに始まり、ちょうどこの時期に大人で夢を見ているとされるREM睡眠も現れてきます。また、母親を区別したり人見知りが始まる時期にも一致し、睡眠の成熟だけでなく脳の発達も関係していると考えられています。

 

〇かんの虫

かんの虫とは、かんが強いとも表現され、小児が異常に興奮しやすくなっている状態をいいます。

眉間に青筋が現れる、顔色が青白い、ひょじょうがこわばっているなど、顔に症状が現れることが多いのが特徴です。

その他、人にかみつく、キーキー叫ぶ、髪の毛が逆立つ、食欲がないなどの症状があります。

夜泣きや寝つきが悪いのもかんの虫のひとつの症状とも考えられています。

 

〇便秘

子どもの便秘の多くは食事や運動などの生活習慣の影響を受けて起こります。

乳児期には母乳・ミルクを飲む量が少ない、幼児では食物繊維の摂取量が少ないことなどが原因で便が出にくくなると言われています。またトイレトレーニングの時期に排便を我慢し、それにより便が硬くなって排便時に痛みを感じてしまうとそれ嫌がって排便を我慢し、また便が硬くなり排便時に痛みを感じるようになる…というような悪循環がおこります。

 

〇消化不良

乳幼児や子どもの消火器は、機能がまだ未熟なために、風邪をひいたり、細菌に感染すると胃や腸などの消化器の働きが乱れ、下痢や嘔吐を起こしやすくなっています。

乳幼児は病気の際、「痛み」「吐き気」などの体調の不良を自分では訴えられません。また、身体の抵抗力がまだ不十分なために症状の変化が激しくちょっとしたことで重篤になりやすくなってしまいます。

 

〇夜尿症

5歳以上の子どもで1ヶ月以上の夜尿が3ヶ月以上続く場合、「夜尿症」と判断されます。生まれたての赤ちゃんから2歳頃までの子どもは、まだ排尿リズムが未熟のため、おむつをしながら毎晩おねしょをしています。夜間のおねしょはは次第に年齢とともに減っていきます。夜尿症は夜寝ている間に無意識の間におもらしをしてシーツや布団、下着、パジャマを濡らします。