円形脱毛症とは
円形脱毛症とは、円形や楕円形の脱毛斑が突然生じる疾患です。一般的には10円玉くらいの脱毛と思われていますが、頭部全体に広がるものや、眉毛やまつげ、体毛に及ぶ重度のものまで、その症状はさまざまです。また、場合によっては完全に発毛しても再発することもあります。
円形脱毛症には、以下のようないくつかの特徴的な症状があります。
<初期症状>
✅なんの兆候もなく突然脱毛が始まった
✅頭部に地肌が見えるとこるがある
✅爪に小さなでこぼこがある
✅アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)を患っている
✅脱毛斑が円形または楕円形であり、境界が比較的はっきりしている
<進行中の症状>
✅朝起きたときに、枕に抜けた毛が数本以上見られる
✅脱毛斑の周囲の毛を引っ張ると簡単に抜け、痛みもほとんどない
✅抜けた毛の毛根の部分が細くとがった状態である
✅脱毛斑が広がってきた
<回復期の症状>
✅脱毛斑の一部に細く短い毛が生えている
✅脱毛斑に毛穴が点々とみえる
✅脱毛斑の周囲の毛を引っ張っても容易に抜けない
円形脱毛症はいくつかの種類にわけられます。ここでは比較的多くみられる「単発型」「多発型」「蛇行型」「全頭型」「汎発型」を説明します。
〇単発型
突然、頭髪に円形または楕円形の脱毛斑ができる、円形脱毛症の中では最も多くみられるタイプです。脱毛斑は頭髪だけでなく、眉毛や体毛などにも発生する場合があります。
発症年齢は子供から老人まで幅広く、男女ほぼ同率でみられます。約80%の方が1年以内に治癒すると言われていますが、まれに次の段階である「多発型」に移行する場合があります。
〇多発型
円形脱毛斑が2つ以上発生するタイプです。適切な治療を行っても、完治まで半年から2年くらいかかる場合が多いと言われています。さらに脱毛斑が結合し拡大する場合(多発融合型)もあります。
〇蛇行型
脱毛斑の結合が細長く、後頭部から側頭部の生え際に反って蛇のように広がるタイプです。治療期間が複数年にわたる場合があります。
〇全頭型
脱毛斑が頭部全体に広がり、最終的に頭髪が完全に抜け落ちてしまうタイプです。非常に治りにくい例が多く、治療が長期間に渡る場合が多いとされています。そのため、治療とともにウィッグなどを使って、円形脱毛症と上手に付き合う工夫が必要となってきます。
〇汎発型
さらに症状が進行し、頭髪はもとより、眉毛、まつ毛、体毛など全身全ての毛が抜け落ちてしまうタイプです。
円形脱毛症の中では最も重度なタイプといわれています。全頭型と同じく、治療が長期に渡る場合が多いため、こちらも同様に、治療の継続とともにウィッグなどを活用して、円形脱毛症と上手に付き合う工夫が必要となってきます。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因についてはさまざまな説が提唱されています。近年では、髪の毛の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生する「自己免疫疾患」を原因とする説が有力です。
免疫機能の異常を発生させる要因としては、疲労や感染症などの肉体的・精神的なストレスや体質的な素因があります。それらも含め、円形脱毛症の原因になると考えられているものには以下のものがあります。
〇自己免疫疾患
円形脱毛症の原因として近年有力視されているのが、「自己免疫疾患」です。自己免疫疾患とは、外部からの侵入物を攻撃することで私たちの体を守ってくれている免疫機能に異常が生じ、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃してしまう病気です。
円形脱毛症はTリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられており、その激しい攻撃により毛根が痛んで、元気な髪の毛さえ突然抜け落ちてしまうのです。
しかし、なぜその様な異常が生じてしまうのかは、まだ明らかになっていません。
また、円形脱毛症は橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、あるいは重症性筋無力症などの各種自己免疫疾患と併発する場合があります。とくに甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の方が、円形脱毛症を併発していると言われています。
〇アトピー素因
アトピー素因とは、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)を持っている人のことをいいます。
円形脱毛症患者の約40%以上がアトピー素因を持つといわれ、半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因が認められるなど、深い関連があるとされています。
〇精神的ストレスによる影響
円形脱毛症の発症要因の一つとして、「精神的ストレス」が挙げられます。精神的ストレスを受けると、それに抵抗するために交感神経が活発に働きます。交感神経は、心肺を早く動かしたり体温を上げるなどの働きがあり、身体がストレスと闘う準備をしてくれています。このとき、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると、交感神経に異常をきたします。その結果、血管を収縮させ、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなって脱毛が引き起こされると考えられます。また、ストレスは毛根への栄養補給を妨げるだけでなく、「自己免疫疾患」や「内分泌異常」などのさまざまな疾患を誘因することもあります。
〇遺伝的要素
中国で行われた大規模な調査によると、円形脱毛症患者の約8.4%に同じ病気を抱えている家族がいると報告されています。それは親等が近いほど発症率が高く、、欧米の調査でも、円形脱毛症患者の一親等の発症率は二親等以上の家族の10倍に及ぶという結果が出ています。このことから、円形脱毛症には遺伝的要因が関係する可能性が高いと考えられています。
〇出産後の女性ホルモンの変化
妊娠から出産後における女性ホルモンの減少も、原因のひとつといわれています。
妊娠中、体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加しています。それが、出産すると一気に通常値に戻ります。女性ホルモンには発毛促進の作用があり、逆に減少すると抜け毛に繋がることから毛周期との関係で産後3~4ヶ月後に抜け毛が多くなります。
多くの場合は頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛となりますが、この時に円形脱毛症になることがあります。。さらにアトピー素因を持つ場合、それが加速されやすいというデータもあります。
ホルモンバランスだけでなく、育児の忙しさによる食事の偏りや出産のストレスが原因になることもありますので、産後の抜け毛には特に気を付けることが大切です。
円形脱毛症の鍼灸治療
髪のトラブルを解消するためには、頭皮の状態を整えることが大切です。
頭皮に刺さない鍼を使って刺激を入れたり、直接鍼を刺すことで頭皮の血流を促し、皮脂や老廃物を排出し、頭皮を正常な状態へと戻します。また、鍼灸治療で毛包の周囲の毛細血管の数を増やし、末梢血管の循環を促し、毛球細胞の分裂活動を増加させることにより毛根に栄養を行き渡らせ、円形脱毛の回復、頭皮の状態が修復され、育毛・発毛を促進します。